draft
草稿
tweet tweet night
***
これ2年以上前のだ…。
fragment05
ABCD
滑り出したペンを誰が止めるのか
エイフラム・ビッツの脚本は誰かの自伝をなぞる
ベイリー・トランの詩は遺跡の壁に刻まれている
キャスレー・マイマーの論文は半分が彼の妄想で
ディル・マッカーソンの小説は姪の見た夢の話だ
それでもアルファベット達の名前が偉大ならば
彼らの文章は大金になるだろう。
fragment04
fragment03
グリフィン出てこねえ…。
うさぎ男はタズルマク。種族名は調律師族。神の楽器の調律師だという神話を持つ、兎によく似た種族。
苦労性で世話焼き。
子供はアリューシャ。人間。最初は人間嫌いだったが、商売と切り離してものすごくドライかつ策士な商人に成長する。口が超うまい。でも中身は人嫌い。
fragment02
悪い神様
村の奥の森には悪い神様がいて、いつも人を呪っている。
だから近づいちゃいけないと、何度も何度も言われていた。
飼っていた鳥が逃げて、ロノが夢中で追いかけ、ようやく気付いた時には、既に来たこともない森の奥まで足を踏み入れていた。暗くて、深くて、怖い。トキのばあさまの声が何度も頭で繰り返された。悪い神様が居るよ。悪い神様のいる森へは行ってはいけないよ。
すっかり迷ってしまって、とぼとぼと藪を歩いていると、真っ暗な森に明かりがさしていた。
月明かりだ。水に反射している。湖があったのだろうか。のどがカラカラのロノはおそるおそる近づいていった。
白い光が濃い影を作っている。水は澄んで、水底まで見えるほどだ。村では目にしない魚も泳いでいる。
無心に水をすくって口に運んでいると、聞きなれた羽音とさえずりが聞こえた。
急いで顔を上げると、ずっと探していた鳥がそこにいた。誰かの、指先に止まってじっとこちらを見ていた。
誰かの?誰の?
つと目を向けると、その人影もこちらを向いた。
悪い神様だ。きっとそうだ。
ロノは身をすくめた。
月明かりに照らされて、湖の淵の岩に腰かけたその人は、とても黒い色の服を着ていた。
きっとこの場所じゃなかったら、その姿に気付けないだろう。髪の毛も真っ黒。肌も浅黒い。
そして、真っ赤な目をしていた。泣きはらしたような、目をしていた。
ロノはすぐに警戒心を解いた。何しろその人は、本当に泣いていたからだ。
悪い神様は泣かない。きっともっと悪い顔をしている。
その人はロノが思い描いていた悪い神様とは、かけ離れた、あまりに優しい顔をしていた。
「あなたは誰?その鳥、私の鳥なんだけど、返してくれる?」
少し震えながら、ロノは遠くのその人に呼びかけた。
ぽかん、とした顔で、その人は少し戸惑っていたが、すぐに立ち上がって、そっちに行く、という身振りをした。
何事も無いかのように、その人は湖の上を歩いていくる。
今度はロノがぽかんとした顔で、その人を見つめた。
「…はい。どうぞ。」
ちょっとかすれた声で、その人はそっと鳥を手渡した。
その人、に気を配りながらも、ロノはほっとして鳥を撫でた。もともとおとなしい子だ。
近所の悪がきが脅かして、家から飛び出してしまっただけなのだ。
安心したようにふくふくと毛を膨らまして、ロノの肩に収まった。
「ありがとう。」
「どういたしまして。…君は、怖くないの?」
「何が?あなたが?」
物おじしない少女に、その人は面食らっている。
「村の人は誰も近寄らないでしょう?」
「悪い神様なの?」
「みんなはそう呼んでるみたい。きっとそうなのかな。」
真っ赤な目を伏せてしまうと、その人は真っ黒で闇夜に紛れてしまいそうだった。
「全然怖くないよ。本当にあなたが悪い神様なの?」
きょとんとするロノに、きょとん、としたその人は返した。
「…わかんない。そんなこと言うの、君が初めてだもの。」
「へんなの。ずっと泣いてたの?目が真っ赤っか。あのねえ、ロウキの花の煎じたのが、目がはれたときに良いって、トキのばーさまが言ってた。」
「…心配してくれるの?」
「だって目がはれると痛いでしょ。ひりひりするでしょ。あと泣くと疲れるでしょ。」
変な子。
そういって、わるいかみさまは笑った。
**
「こんばんは。ロノ」
「こんばんは。うさぎのかみさま」
あれから何年もたった。ロノはこの人を、うさぎのかみさまと呼ぶことにした。面倒くさいときはうさぎさんと呼んだ。
森の奥へは入っていけない事になっていたから、結局会うのは夜中にこっそりだ。
「こんなとこに来ても、楽しくないんじゃないの?」
「面白いよ。村より星が良く見える。おかげで村じゃ、『居眠り娘』扱いだけどね」
にっと笑って見せる。ロノはとても大きくなった。兎のかみさまはあまり姿は変わらなかったけど、真っ赤に腫れた目は治って、今はやっぱり黒い目がロノを見ている。
「寝る子は育つ、とか言ってさ。寝てないのにねえ。」
背丈がぐんと伸びて、男の子のようないでたちの少女をうさぎのかみさまは笑った。
「寝なきゃダメだよ。体に悪いよ。」
「でも、私が来ないとうさぎさんの目がすぐに腫れるんだもの。とんださびしがりの神様がいたもんだ。」
「ロノが来ると、夜だけど昼の様だなって。ロノが来ないと、昔を思い出してしまう。」
しょんぼりとする神様は、まるで人そのものだ。本当に神様なのか疑わしくなってしまう。
「うさぎさんは悪い神様じゃない。私が保証する。っていうか、こんな悪い事する度胸もなさそうな神様の方が珍しい。」
「…ほめてない…」
ふへ、と笑う神様は、そこら辺のお兄さんと変わらない顔をしていた。
結局彼が悪い神様と呼ばれる存在であることは確かなようだった。でも、別に彼が悪いことをしたわけではない。
彼は、何もできなかった神様だった。
何もできなかったから、次第に心が離れ、信仰が離れ、そんなぞんざいな扱いが原因、と、天災や人災を彼のたたりにされた。気付けば彼はすっかり、悪い神様、という信仰の元、村に根付いてしまっていたのだ。
「みんなも話してみれば、絶対悪い神様ではないってわかるのにね。」
「…どうかなあ。きっと悪い神様だって信じている人には、僕は怪物みたいに見えるんだと思う。ロノは僕と話したから、そう思うし、そう見えるだけかもしれない。」
そもそも神様が見えること自体が異質なのだ。と彼は言う。
絶えてしまった神官の血筋なのか、あまりに薄い信仰心がなす業なのか。
「どうでもいいよ。私にはうさぎさんは全然怖くないし。色々物知りで面白いし。」
ざっくばらんでおおざっぱ。闊達で全身がばねのように力で満ちている。ロノはそんな少女だった。
あまりに僕と違う。
うさぎのかみさまはいつも心の中で、いつまでもこうは居られない、居ちゃいけない、と思っていた。でも。
ただ、憧れて、やまない。大切で、仕方がない。
いつか彼女も大人になって、僕のことなど忘れていく。
そんなことを考えては、少し泣いた。
fragment01
「あんたまさか、リッターなのか?!」
「なによ、リッターって」
「違うのか…」
「だからなによ、それ」
「この『終焉無き世界』に終わりをもたらしてくれるっていうおとぎ話さ…」
「なにその中二くさいの…」
「白い従者を連れているっていうからてっきり…」
「どこにそん…なの…」
振り返るとヤツがにんまりと笑っていた。
白いからだ、白い鬣、きっちり着こなした燕尾服。
そりゃはた目から見れば彼は白い従者だろう。
「…なんであんたがいるの」
「おンやあ?申し上げませんでしたかな?わたくしあなた様のいらっしゃる場所ならいつでもどこでも
おともすることが可能なのですよ?」
にやにやと笑う白い歯が腹立たしい。
いつも通りそれだけはやたらといい声で私を馬鹿にしたように言いながら、
ヤツはさっと顔を村人に向きなおした。
「そンれにしても、この世界、まあなんというかくも中途半端なファンタジーでしょうなあ!」
「だれが書いたのよこんな中二くさい話…まるで中学生の文芸誌じゃない。しかも超古典的な。」
「さアて、私ども、筆者様の事は神に等しき存在として崇め奉りますが、このようにお話の進行顛末を
放棄された方の場合は『神は死んだ』と申しまして。死にたもうた神など教会に祈るのみでございますので、
さして重要視いたしません。」
「どうでもいいってことね」
「さようでごンざいまして。しかしまあ、このご時世そういった世界が、日々養鶏場の鶏の卵の如くぽこぽこと生み出されている始末。我々もさしてそのようなどんぐりの背比べ的な内容の物は、中身も見ずに処分するのが常でございます。」
「じゃあなによ、この世界はちょっとそこらのどんぐりと違うってこと?」
「いいえン。対して変わりません。」
「なんなのよ!」
「この世界、筆者は200と38人に及ぶ複合世界にございます。」
「はあ?」
「つンまり、要点のみを申し上げますと。我々もすべての物語という物語を中身も見ずに殺すのは忍びない、と考えまして。似たような世界をがっちゃんこーっと合体させたうえで出来上がった世界がここになるのでございます。」
さも楽しそうにひひひ、と笑う馬を、私は殴り殺したくなった。
「それどうやって終わらせろってのよ…。」
「ご安心を!この世界、200と38人集まったとしても、結末は同じでございます。」
「…つまり、似たり寄ったりな設定と人物が集まってるってこと?」
「さっすが上条お嬢様!お察しのとおりでございます。さあて、お手並み拝見仕りましょう!」
「ちょ、ちょっとまって、この人が言ってたリッターってなによ?私たちの事は世界の住人にはかかわれない事項なんじゃないの?」
「おンやおや、そのことをお伝えしわすれました。我々の事は世界の住人は基本的に察することもできません。しかし、先ほどお伝えいたしましたが、筆者はこの世界の神にございますれば、それに等しき我々もまた神に近しき存在。
つまり伝説上の救世主のごとき扱いをされるケースがございます。お嬢様はその立場を無視することも、有効にお使いになる事も自由でございます。」
「りったーって、もしかしてWriter?」
「さあンて、我々、言語というものの概念につきましては知識はかなり乏しいものでして。」
**
かきかけの何かを投下するシリーズ。もうこれ2・3年前のですが気にしない。
ツンツンした文学少女と、途中で作成をやめてしまった小説たちを終わらせるために少女を異世界にぶっこんだ、
頭が馬の紳士(癪に障る語り口調)
junkword05
****
Myosotis scorpioides
****
ヒグラシが鳴いているのが聞こえた。
グラウンドには日が落ちる早さも気に留めないでボールを追い掛け回す部員たち。
校門には彼氏待ちの彼女。虫たちが控えめに鳴き始めて、日が焦らす様に落ちていく。
「…お、アキー。今帰りかー?」
格子の向こうで野球部員の一人が声をかけてきた。クラスメイトの中でも結構仲の良い奴だ。
「今帰りー。おつかれー。」
呼ばれて去っていく野球帽の後姿に手を振って、校門を抜ける。
夏休みも終わったし、またいつもの生活。まあ、悪くは無い。
「アキっていつもそういうよなー」
顔を上げるが、誰もいない。耳に聞こえたわけではないのはわかっている。
どこかで聞いた、誰かのせりふなのだろう。そう、いつか言われたのだ。
そういうことは良くあるものだと思う。問題は、ここ2・3日に訪れるこの無意識の回想は
いつでも同じ声なのだということ。そこにわずかな違和感を感じている。
が、すぐに忘れる。些細なことだし、デジャヴというのもある。人間自分の事だってよくわからないのは
当たり前だ。問題無し。早く帰ろう。
「ただいまー」
「お邪魔しマース」
…まただ。後ろから聞こえる、いや聞こえていたあの声。
いったい誰だったんだっけ。親が留守がちな俺の家によく遊びに来ていたアイツ。
晩夏、秋に差し掛かる夕空は、曇りがちで狭い。
*
もう1つ、気にかかる事がある。
「倉田君、今日日誌の係りだからね」
「っ!?…お、おう」
隣の席の、森瑞穂。女子。黒いロングヘアの、もっぱら男子のねらい目という噂の美人。
でも俺にとってはそんなことどうだって良い。隣の席になったことをどんなに羨ましがられようが、
俺としては出来るだけ離れていたい。声をかけられるだけでいちいち飛び上がるほどに。
俺はこの女が、怖い。
「ホームルーム始まる前にとりに行って」
「おー…。」
その理由は、全く解らない。ただ、怖いのだ。
*
その日の放課後、隣のクラスの担任に声をかけられた。
「倉田―、ちょっと頼みたいんだがー。」
「なんすか?」
「柊んちとなりだろ?悪いんだが、この書類届けてくれるか?」
「…いいですけど、どうかしたんですか?」
「…ほら、亡くなった後、アイツに関する文集やら部活の作品やら出てきてさ。ご両親にな。」
ああ、と気の無い返事をした。
そういえば、隣の柊翔太は夏休み中に事故で死んだんだった。おとなしい、地味な美術部の男子だった。
「悪いな、幼馴染だからって使っちまって」
「いいですよ、別に…」
言葉の途中でふと思考が停止した。幼馴染?
頼んだーといって去っていく教師は全く気にも留めなかった。俺は廊下の真ん中でモヤモヤとした
頭の中の網を掻い潜ろうとあがいている。
幼馴染?
何も、覚えてないけど。ただの、お隣さん、だと。
あれ?
帰る途中、そっと渡された中身をのぞくと、そのなかに自画像があった。まだ頼りない筆遣い。
裏には一年ヒイラギと書いてあり、昨年製作されたものだとわかる。
「…あ、そう、こんな顔だった。翔太…ショータ。…あれ?」
頭がずきずきと痛み出す。モヤモヤしているものが濃くなっていくような感覚に襲われる。
「アキっていっつもそういうよなー」
隣で苦笑いをする、少年の顔がよぎる。
「お邪魔しマース。…あ、俺家からモンハンもってくるわーちょい待ってて。」
「ねみー、ねみー…。悪い、コーヒー買ってきて…。…ケチ。」
言葉と表情が流れていく。どこかに押し込めていたものがなだれ込むように。
*
何とか平然と隣の家のおばさんに頼まれ物を渡すと、逃げるように自宅に駆け込んだ。
「忘れてた…?アイツ、いつの間に死んで…俺…アイツのこと全く…」
頭が痛い。涙も出てきた。思えばどこかぽっかりと空いていた、誰かの居場所。
下校する道の連れ、休み時間に忘れ物を借りにいく相手、ゲームの話…。
すべて、無かったことにしていた。
そして同時に何かへの恐怖を思い出す。あの、恐怖。
*
「…森さん、さ、隣のクラスの柊って、知ってる?」
「…この間亡くなったんでしょ。話すごかったもん。知らないわけ無いじゃん」
平然と、至極当たり間のことを答えられる。どう質問したって俺のほうがおかしいのは解ってる。
「そ、か。あ、ごめん。なんでもない。」
いまだにこの恐怖の正体がわからない。ただ、何か、強制的な力の差におびえるような。
「柊君が、どうかしたの?」
何気ない言葉に、俺はまたびくっと飛び上がる。
「あ、ほんとなんでもないんだ。わり、ちょっとトイレいってくる」
何が変、って、俺が変なんだ。でもどうしてだろう。いつからこんな事に?
思い返してみる。もちろん、アイツが生きていた間は、昔ほどではないにしろ交流があった。
時々一緒に帰ったり、昼飯を付き合ったりしていたと思う。
何が、あったんだっけ…?
*
また、ヒグラシの声が響きだす。
夕暮れ、俺は人の少ない廊下でまた飛び上がった。
「倉田君。ちょっとごめん」
「な、何?森さん??」
赤い日が差し込んで、廊下は一色に染められている。窓からは部活の連中の声がする。もうあいつらも上がりの時間だ。
「柊君のこと、なんだけど。幼馴染だっけ?」
「…う、うん。そうだけど…。」
ふっと、空気が変わった。
赤い廊下に、黒い長い髪の女子学生。学年1・2を争う美少女。
でも彼女と対面したその時の俺の頭の中では、誰かがサイレンを鳴らしていた。に げ ろ って。
「思い出しちゃ、だめ。忘れるの。」
「え?」
「君が思い出す資格なんか、無い。馬鹿みたい。こんなに何度も手間かけさせて」
「…もり、さん?」
「新城クン、もう一度お願いね」
音もなく、一人の男子学生が現れた。何度か見かけたことがある。めがねをかけた細身の少年だ。
「…ミズホ、君、少し変だ」
「いいから。困るでしょ??」
彼女がこちらを見た。憎悪に限りなく誓い目で、軽蔑もこめて。
そして俺はその目を知っていた。何度も、何度も見据えられ、そして、奪っていった目だ。
「…やめ、ろよ。…また、やるのか?…何度目、だっ…け…?」
声が震えてくる。すくむ足をこらえて、俺は逃げ出した。
「!!…待ちなさい!!」
彼女が追ってくるのが解った。でも止まれなかった。つかまったらきっとまたアイツのことを忘れてしまう。
どこか不安定な生活の中で、ぼんやりとした毎日を送って、あいつの不在に悲しむことも無く。懺悔することもなく…。
懺 悔 っ て 何 の ?
*
どん、と誰かにぶつかった。
顔を上げると、1つ上の学年の男子が立ちふさがっていた。
かなり柄が悪い。がたいもでかく、とても逃げられそうに無い力で腕をつかまれた。
「は、はなせ…!」
「…ミズホ、まだやる気なのか。」
そいつも森のことを知っているようで、心なしか悲しげな目で彼女を見つめた。
「…何度だって、やるわ。ルールでしょ」
「でも、ね、ミズホ。ちょっとやりすぎ…」
「ルールでしょっ!!」
現れた女子学生に対し、森は叫ぶような声で遮った。
俺は彼女の目が怖くて、腕をつかまれたままその場でうずくまった。
「…また、奪うんだ。あいつの、事。俺から…。」
その声を聞いた森は、とうとう箍が外れたように怒鳴りだした。
「あんたが奪ったんでしょ!?私たちから、彼を!!あんたが余計な詮索するから、こんな、馬鹿みたいな…」
「…奪った?」
「あんたが柊君を死なせたんだ!!」
「ミズホっ、落ち着け、言いすぎだ!」
3人のうちの誰かが、彼女をたしなめた。でも俺はそんなこと聞いていなかった。
俺が、死なせた。
最後の記憶が開いていく。あの日、夏休みの最後の週。初めてヒグラシが聞こえた夕暮れのこと。
*
最近どこへ行ってもごまかされる。きっと彼女でもできたんだろう、あいつめ。
そんな事を考えながら、あいつをつけて学校まで来たのは、確かにただの好奇心だし、
品の無い冷やかしだったから、正直うまくつくろえない。
でもそれどころじゃなくなったのは、あいつが化け物に追いかけられて飛び出してきた時。
「あ、アキっ!?」
俺は、おまえ、これ、なんだよ、とか、そう必死に言っていた気がする。でも記憶はあやふやだ。
それまで逃げ続けていたショウタは俺に背を向けて、かばうようにソレに立ちはだかった。
「逃げろ、はやくっ」
「これ、マジ…?ショウタ、おまえ、なにかばって、お前も逃げろよっ」
ショウタの腕をグイ、っと引っ張ると、何かの準備を遮ってしまったらしくあいつは慌てだした。
「ばかっ、はやくアキだけで逃げろって…っ!」
…その後のことは、真っ白だったことくらいしか記憶に無い。
目が覚めたら、あいつは血だらけ。俺はあいつに突き飛ばされて、藪に突っ込んでいた。
蒼白の顔をした4人、森、新城ともう二人があいつを囲んで突っ立っていた。
俺は動けなくて、ただどうしようもなく呆然としていた。
「…あんたの、せいだ」
森がつぶやいた。新城が進み出て、何か不思議な光を俺に向けた。
「…ここでおきたこと、忘れてもらうから」
とても、冷たい声だった事は、よく覚えている。
*
「…そ、か。おれ、あいつの邪魔して」
新城の顔が歪んだ。
「どうする、ユキ。彼はどうしても忘れられないみたいね」
柿島ノリコ、と名乗った女子学生が苦笑いで新城をみた。新城は目を閉じて、ため息をついた。
「何でよ、もう一回するんでしょ!?見られちゃまずいんでしょ!?」
森が怒鳴る。新城は森をみて、つぶやく。
「…ミズホ、あんまり繰り返すと、彼が壊れちゃうよ…」
「お前、少し落ち着けよ。柊恋しさのあまり人殺してちゃ、あいつが浮かばれねえって」
柄の悪い先輩、野田キヨノリが森をしかる。
「だって、こいつが出てこなかったら、ちゃんと柊君は合流地点までこれたし、少なくとも死ぬことも無かった…!」
ぼたぼたと大粒の涙が森の頬を伝って落ちていく。
「でも、彼が守った人を、壊しちゃうのはきっと悲しむと思うな」
よしよし、と頭をなでながら、柿島がなだめる。
「それにさ、なんどもなんども思い出しちゃうって事は、この人だってすんごい後悔してるんだよ」
「…」
森は顔を覆ってしゃがみこんでしまったが、それ以上何も言わなかった。
「…さて、倉田アキ君、だよね。君に選択肢は2個ある」
新城が向き直って、静かに言った。
「1つはもう一度だけこの光ですべてを忘れる。忘れたら僕らは全力で君が思い出そうとするきっかけを阻止する。
だから君は二度と思い出さないし、悔やむことも無い。彼女を怖がることもなくなると思う」
「…もう1つは、全部を受け入れて、これから普段どおり生活。わかるな?」
新城と野田に囲まれて、俺はぼんやりとしたまま選択を迫られた。もう外は真っ暗だ。ヒグラシも聞こえない。
*
チャイムがなって、授業が始まった。退屈な古典の授業だ。
外の景色は枯れ木が目立ち始め、秋の気配は濃くなる一方だ。外のグラウンドの連中はジャージを着込み始めている。
正義の味方
ぽつりとそんな言葉が頭に浮かんだ。
忘れるか、の問いは、もちろん否だ。
忘れること自体が、罪になることだって、ある。それに、あいつはやっぱり俺にとって大きい存在だったようだ。
忘れるなんて、出来るわけない。一緒に生きたことも、死なせたことも、生かされたことも。
あいつらが何なのか、いまだに説明はされていない。
ただいつもどおりの生活をすることと、口外しないことだけを条件に、俺は記憶を許された。
あの化け物も、彼らの不思議な力も、さっぱりわからない。
でもあいつらが何かの個人的な利益のためにやっているとは、思えなかった。
誰もが辛そうだったし、あいつが死んだ後でも、活動は続いているらしいからだ。
だからきっと、あいつらは正義の味方みたいなもんなんだ、と解釈している。
ぽやん、としているくせに、妙に責任感のあったあいつには全くふさわしい役職じゃないか…。
かくん、と頭が動いた。
隣の席の正義の味方は、最近お疲れのようだ。敵さんは夜にしか出ないらしい。
誰も知らない。誰も評価しない。そういうところで戦っている。
だったら俺は、こいつらのことも絶対忘れない。何の足しにもならないけど、応援しているつもりだ。
だから、彼女のノートがミミズで埋め尽くされる前に、そっと隣の席の美少女戦士を小突いてやった。
※マジ古いです…大学入る前じゃね?
junkword04
ああ、あたりまえだろう。
「そうだよな。当たり前だ。そう。お前、いつもそういって俺にあきれてたよな」
そうだっけ?覚えてないな。
「全く。お前はいつもそうだ。自分の興味のあることしか、そのよく使われた脳味噌には入らないらしいな」
赤い
赤い血が
赤い血が彼の
彼の服を染めていく
「ああ、俺全然つらくねーな。苦しくもない。おかしいな」
おかしいだろ、それは。
(こんなに血を流して。こんな異国の地で。こんな野郎の前で。)
「故郷には家族もいてさ、お前、知ってたか?俺婚約者いたんだぜ?」
まじか。おまえに恋人か。イメージできない。
「まじまじ。結構可愛い人でさ。…幸せになるといいなあ。おれ、結婚してなくってよかったわ」
ああ、未婚と未亡人じゃ生活が違うからな。
(馬鹿だろ、こんな、こんなところで死ぬのか、お前。)
「ヴィル、やっぱお前、後悔、してないだろな?」
してない。
「そか。あー、アルに会いてーなー。また3人で賭けしようぜ」
それでお前はまたアルに馬鹿勝ちさせるんだろ?
「ははは!そういやそうだったな!」
黒く
黒くこびりつく
彼の頬に
彼の命の色が失われていく
「ああ、アルにあったら言っておいてくれよ。3年の時貸した40G返せって。」
わかった。ぶん殴って伝えておく。
「へー ヴィルが ぶん殴る か… 見てみたかったわ」
*
なあ
「ん?」
グリフが、3年時に貸した40G 返せってさ。
「…あ、あははは!ほんま、グリフのそういうとこ好きやったわあ」
送っとけよ。あいつの実家に。
「りょーかいりょーかい。利子つけておくったるわ!」
あいつさー、恋人いたんだってさ。
「マジで?そりゃ意外やわ…よほど気の付くお嬢さんなんやろねえ」
爆発音がする。
焦げ臭い。
灰が舞っている。
誰かが彼の仲間を殺している。
なあ。
「ん?」
俺さ、あいつに、何度も、何度も、後悔しているか?って聞かれた。
「…」
なあ、どうしてかな?
「そりゃ、そんな顔しとったら、僕も聞きたくなるよ?」
なあ、なあ ー。
(声が震えるんだ。足がすくむんだ。)
(どうしてお前はそんなに、昔どおりに、笑ってるんだ?)
(俺は、俺は。 もう戻れなくなることが分かって、こんなに怖いのに)
「ヴィル、こっち、見?」
は?
「僕もな、後悔してんねん。あいつに生きているうちに、貸した金返せなかった事とか」
「ガキの顔見ずに、家、帰れなくなる事とか」
ガキ!?
「あ、知らんかった?僕、一応既婚者なんよ」
おま、教えろよ!!
「そりゃ無理やろー。いくら僕でもヴィルんとこに連絡はさすがに無理やわあ」
誰かが、彼の名前を呼んでいる。
ナイフを持って。
銃を持って。
殺意を持って。
「な、ヴィル。僕がいま一番後悔しそうな事教えたるわ」
ん?
「お前をここからうまーく逃がすことに失敗することや」
…何言ってんだ。
「お前と一緒に上言ったら、間違いなくグリフにぶん殴られるわーそれは勘弁してほしいしなあ」
アル、俺、大事なこと忘れてた。
「ん?」
グリフと約束したんだ。
「んー何 ぶっ」
お前、ぶん殴るって。
*
男が一人、丘の上に立っている。
かつてそこに町があって、大層栄えていたのだ。
この半島に住む多くの民族が互いに支えあい、交流し、時に話し合い、成長しあった。
そう、大層栄えていたのだ。
長い長い内乱を収め
いくつかの民族はぎこちない交流を再開している。
それでも、
ここに人はいない。
墓もない。
かつての面影も、思い出を語る相手も。
男が一人、丘からかつての故郷を見下ろしている。
かつてともに学び、ともに遊び、ともに暮らした、
ただ 血が異なるだけで、道を違えた
彼らの事を想い、目に涙を溜め、それでも
俺はもう、後悔は していない。
junkword03
目の前には真っ白な空間が広がっている。
上も下も、左も右も、至る所隙間無く真っ白なペンキで塗りたくった様な。
それはおろか、壁も床もどこなのか分からない。
「では、ページを開いてください。」
突然後ろから声がかかり、わ、と飛び上がった。
振り返るとそこには、燕尾服に手袋をつけた紳士が居た。しかし顔は紛れもなく馬だ。
「…」
叫び声を上げることも忘れる。いや、良くできたかぶり物だ、と頭が別の方向に舵を切り替えた。
「さあ、ページを開いてください。いつまでもみかえしでは、話が進みません。」
「ページ?みかえし?どこに本があるんです?」
というか貴方はだれ、という質問をしそびれた。
「貴方の居る場所にあります。さあ、開いてください。」
まったく言うことが理解できない。
「ひらくっていったって…本が無くちゃ何が何だか。」
「開くだけで良いんです。さあさあ。」
じゃあ、とページをめくるまねごとをする。
かさ、という音がして、目の前が真っ暗になった。
「え」
また声を上げる。姿の見えない馬紳士は言った。
「1ページ目です。目次になります。」
視線を動かすと、いくつもの窓が見えた。ちょうどパソコンの画面ほどの大きさだ。
それぞれが違う様子を映している。窓に差し込む日差し、都会の雑踏、銃撃の音響くビル、あかね色に染まった街、
誰か二人の足下、泣き崩れる女の背中…。
「ハードボイルドもの?」
苦笑いで窓をのぞく。
「そのようです。」
「好みじゃないなあ。他の無いの?」
この状況が夢だと判断した彼女は、軽く受け答えをする。
「では、本を閉じましょう。」
馬紳士も軽く返す。
分かった、とも言わず、彼女は両手で本を閉じる動きをした。
ぱたん、という音がして、窓が全て閉じた。
もう一度、本を開く様な動作をする。かさ、という音とともに窓が開く。
「…これは…。」
「お気に召しましたか。」
夏の日差し、風鈴の音、誰かの笑顔、走っていく子供たち、山に沈む太陽。
「終わってない、みたいだけど。」
確実に窓が足りなかった。目次なのに、最後の方の章がない。
「ええ、ですから、終わりを書いて頂かなくては。」
「……私が?」
「先ほどの本も終わっておりません。ここは未完の本しかございません。」
「彼らを終わらせるために、私どもは貴方の様な人をお連れしているのですよ。」
馬紳士が饒舌になっている。彼女はだんだん怖くなってきた。夢なのに、手に汗をかいている。
「さあ、お話の終わりまで、私を連れて行ってください。そうすれば、貴方を元の世界にお返ししましょう。」
ここは未完の話の行き着く場所。
彼はそこの住人。
気まぐれに選ばれた私は、汗ばんだ手でペンをとり、ページをめくる。
始まったお話を、終わらせるために。
※ホラー風味…これも年単位で昔のブツ
junkword02
ぼんやりと空を見ている成田に、幸島は後ろから声をかけた。
「うん。あのさ、なんかいるのかなって。」
「どこに?」
きょろきょろとし出す幸島を、違う違う、と笑う。
「見えない様な存在がいるのかな-、なんて。妖怪とか幽霊とかじゃなくてさ-。」
言いながらも照れているのか、髪をいじる。
「違う次元に、とか。とにかく見えない存在。…ってまあこれは、」
「漫画の影響だな?」
またか、とでも言う様に幸島はため息をついた。おおかた、そういったモノが出てくるファンタジーでも読んだのだろう。
「この間は運命の恋がどうとか、色々妄想していた気がするけど。」
「恋愛映画はもういいのー。実践したらもうなんか色々面倒になってきた。」
ぐでー、と成田がベランダの手すりに身をもたれる。すぐに影響される子だと思ったら、まさか本当に実践していたとは。
幸島は苦笑いする。面倒、と言われている相手が不憫だな。
「あー。でもそういうのが居たらいいよねえ。なんかすごいよねえ。」
想像の中で彼女はその存在とどう接しているのだろう。とにかくなんだか楽しそうだ。
「そしたらきっと、色々モノの見方が変わるんだろうなあ。」
「さあねえ。それがムカデとかゴキブリみたいな形だったら、見なかったことにするだろうなあ。」
うわあそれは嫌ぁ、と成田が笑う。と、そこに別のクラスメイトが呼びに来た。
「ああ、面倒の元が……」
「なに、彼氏くん?行ってあげろって。」
笑いながらベランダから成田を押し出す。
「見方が変わる、ね。」
あなたも見ているのかと思った。この世界を見ているのかと思った。
幸島は成田の居た場所に立った。
校庭では放課後の部活動が始まっている。雨上がりの湿り気を帯びた風が髪を揺らした。
そういえばさっきまで雨が降っていたっけ。梅雨ももうじき明ける。
空に居る時間が長くなった太陽も西に傾いて、空は色を失い始めた。
せわしなく行き交う車。信号を渡る、カートを引いたおばあさん。幼稚園から帰ってくる親子。
遠く、雲が流れてくる方から、それは緩やかによってきた。
小さな光の粒に似たそれは、街の中を巡る風に乗ってこちらへ流れてくる。
道路を渡り、川の中にある石の様に車やおばあさんをよけて、街路樹を飲み込んで、校庭を覆い尽くして。
気流に乗って校舎の壁を伝ってくる。幸島の目の前まで来て、それは一瞬こちらを見た様な気がした。
あなたは いかない の か
そんな事を聞かれた気がした。
肩で切りそろえられた髪が揺れる。
わたしは ここに生きているよ
それはすぐに目の前を通り過ぎていく。いくつもいくつもそれらを見送って、幸島はまた遠くを見つめた。
この世界を知っている人は少なくない。あの漫画はきっと同じような人が描いたものだろう。
でも、物の見方が変わったか、なんて。
世界は、生まれたときから世界は、いつだって、広くて、怖くて、綺麗だった。
雨上がりの空気は熱を失い始めていた。深呼吸すると肺の中がひんやりとする気がする。
部活動の声が響く。空は次第に赤みを増している。雲も、風も、濡れて光る町並みも、みんな綺麗だ。
「いかないのか」
その問いかけに、惹かれた事も少なくはない。
それでも、彼らが同類と思ってくれるくらい自分が、人間のなかで異質でも、
この生活を失うのをためらう自分は、きっと人間らしい。
「こうじまーばいばーい」
下で成田が手を振っている。隣にいるのはさっきの彼だろう。話の割には楽しげで、似合いのカップルだ。
ちょっと身を乗り出して、手を振り替えす。
やっぱり、この世界は素敵だと思う。きっとあれらが見えなくても。
「こーのしあわせものがー」
つぶやきながら、すこし笑いながら、幸島は教室に戻りベランダのガラス戸を閉めた。
ガラス戸の向こうは、もう真っ赤に染まっている。
※もう年単位で昔に書いたものだ…
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■屋根と船と魔女の世界
大陸は3つ。
『西の屋根』
『東の船』
『笑う魔女』
島は3つ。
『千本の剣』
『神の島』
『神の落としもの』
二足のものも、四足のものも、空を飛ぶものも地を這う物も
この世界にはびこっている。
ただ一つ、『神の島』を除いて。
・『西の屋根』の事
『西の屋根』の事を知りたいならそんなに苦労はしない。
知の国「アレイ」に行けばいい。
そこには「賢者の妄想」と呼ばれる巨大な図書館がある。
そこの本棚のほんの一角で、この大陸の歴史は大体わかるさ。
西の屋根の国は、極端に強い国と極端に弱い国しか生まれなかったから、
その歴史は血にまみれることはめったにない。国の数だって500年に一度減るか減らないか。
だからこそ、文化は豊かに栄え、だからこそ、命は色を失う。
神に嫌われた地「ハル」はいつだって、カサカサとした風と痩せた草しかない不毛の地だし、
「その国の物は石から生まれる」ともっぱらの評判の大国「ガ」は、
商売相手やお偉い先生には向くが、友人になるにははご遠慮願いたい人種ばかりだ。
石みたいなやつらに搾取されている「ツツ」や「マーナ」は、賑やかな国だが、
「ガ」との主従関係にあらがうことさえ諦めて、裏路地はため息であふれてるって話だ。
「ハリム」はいい。あそこはいつだって、陽気で、力強い奴らばかりだ。
商魂たくましいのは小さな国土しかない貿易国家なら仕方もあるまい。
あそこは『東の船』のやつらが、本物の船に乗ってやってくる場所だ。
いつだって新しい風が吹いている。
「ゲフェン」と「アシェケ」?ああ。あそこはしょうもないことで争ってばかりだ。
ほっときゃいいさ。どうせ100年近く小競り合いを続けてるんだし、
困るのは「ルーレル」の人間くらいだ。
・『東の船』の事
『東の船』の歴史を知るのはたいそう難しい。
何しろ、いつだって血で血をあらう争いばかりだ。
国ってもんが定まっている時期が珍しい。
「フーマ」くらいだろう、こんなに長く統治が続いているのは。
あの国はうまくやった。何しろ『西の船』の「ハリム」と交易をする約束を取り付けたんだから。
まだ王は若いっていうじゃないか。大したもんだね。やっぱり船大工の腕がいいんだろうね。
今は、どんな国があるんだっけ。
「ニズム」。そう、そんな国があるらしいじゃないか。
「フーマ」に守られて、北の連中からの侵攻をしのいでいるってね。
たいそう豊かな国らしいね。油田、塩田、真水も豊かで、森も、海も生き物であふれてるって話だ。
神様はなんでその塩の一つまみくらい、「北」の連中にやらなかったんだろうね。
「北」ってのは、大陸の北に延びている「船のへさき」の部分さ。
今は「ジシス」「パヤンガ」「スーツク」「カルファナ」「ルカリ」…そんなちっこい国が集まっている。
資源らしい資源はあまりない、貧しい国ばかりだ。信心深い奴らが多いが、信じてるものが違うってのも厄介だね。
へさきの根本、「フーマ」との接点には、無法地帯「ハラ・ガラサ」が腰を据えている。
詐欺、強盗、殺し、なんでもありさ。あんなところ住めたもんじゃない。
まだ、『千本の剣』の方が住めるんじゃないか?
・『笑う魔女』の噂
その島が、突然あらゆる門戸を閉ざしたのは、ほんの100年ほど前だ。国の名は「パセドナ」。
船が着岸できる場所という場所を固い関所で取り締まり、
よっぽどの特権が得られない限り、その島に入る事は出来ない。国家レベルの交渉が必要で、
それでも奴ら、そう簡単には首を縦に振らない。『西の屋根』の「ルーレル」は、結構努力しているようだが。
これは、確かな情報ではないが、こんな噂がある。
「あの島の中では、時が1000年早く進んでいる」
どういうことかはわからない。ただ、私も一度だけ見たことがある。
あの島から、巨大な鉄の鳥が飛び立ったのを。尾羽から青い火を噴き、龍にも勝る速さで、空を駆けていったのを。
・『千本の剣』の光景
誰もすんじゃいないさ。あの島には。
居るのは、数頭の竜。誇り高い、気高い、お高く留まった竜たちさ。
人が、嫌いなんだと。
島の近くを船が通るだけで、剣山みたいに突き立った鋭い山々の合間から、
不機嫌そうに火を吐いているのを、よく見るぜ。
こっちの言葉が分かるくせに、絶対に話そうとはしない。
昔はあっちこっちにいたんだってよ。
でも、その血があらゆる難病を治す、って噂が立った途端、
あっという間に人間どもに仲間の多くを狩られて
あいつら頭にきたんだろうなあ。それまでは、友達だったって、おとぎ話もあるもんなあ。
嫌いだよ。でもさ、あいつらが剣山の先っちょで、海風に吹かれながら遠くを見ている様は
馬鹿みたいに綺麗だと思うさ。嫌でもな。
あれ、誰を探してるんだろうな。
・『神の落し物』への航海
某日、偉大な航海士(××ページがかすれて読めない××)は、不運にも南海にて嵐に見舞われた。
奇跡的に見知らぬ地へ流れつき、現地の人間により一命を取り留める。
彼は目を覚まし驚いた。かつてこのような場所に島があり、まして国があるなどと、聞いたことがなかったのだ。
彼は現地人の協力をもとに母国フーマへと帰り着き、そしてこの偉大な発見を報告したのだ。
南海にポツリと浮かぶ小さな島国「ナウマリ」は、『西の屋根』『東の船』のいずれの国とも違う
文化を持ち、言語をもっていた。彼らの衣服や住居は至極素朴であり、文化の成熟はいまだ発展途上だと推測される。
彼らは、自らの国を「神の落し物」だと称した。
どの大陸とも離れているためか、キメラの類は全く生息しておらず、妖も純粋な精霊に近い姿で、現地の者と交流を深めているようだった。「彼ら」自身が何かは、推測の域を出ない。「ヒト」とも「バル」ともつかぬその姿は、我々の研究にお(××記事はここで破かれている××)
・『神の島』への漂流者
…驚いた。ここに来る生き物などいないと思っていたよ。
当然知っているのだろう?ここが『死地』あるいは『墓所』と呼ばれる島であることを。
見てのとおり、草一本生えてやしない。ここで生きられる命など、無いのだよ。
君も、早々に帰るべきだ。ここには毒性の気体を噴出する沼もある。
私か?私は『墓守』だよ。私だけではない。
この「死地」で唯一生きられる一族が、我々「ファーラ」だ。「ヒト」とも「バル」とも違う、「神の人形」。
神はこの地に眠る御方を、たいそう大切にしていらっしゃる。
寂しくないように、と作られたのが、我々だといわれている。
さあ、もうお帰り。
ここは生きているものの地ではない、とさっきも言ったのは、嘘ではないんだ。
・『沈んだ国』
今や歴史書でしか、その姿を知る事が出来ない地がある。
名前を「ノーマ」という。北海の中央に沈んだ国だ。
小さいながら、他の国を凌駕する文明をもち、大量殺戮が可能な兵器をもって、破竹の勢いで他国を侵攻し、
二つの大陸を手中に収めんとした、強権の国家だった。
その文化の根源も、滅びた理由も、今や国とともに深海の底に横たわり、二度と目覚めはしない。
補足:
・バル…いわゆる亜人の総称。種の祖先は精霊や妖が人の祖と交わったもの。
・キメラ…人が作り出した生き物が野生化したもの。臆病だが繁殖期は共謀。
・妖…精霊が劣化したもの。いわゆるモンスターの類のような存在。
※昔裏ページにおいていた世界観設定です。
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温度を失い始めた西寄りの風が、渡りの季節を告げている
その風たちが雲を散らして、今空は高く青く、広く、冷たかった
黄色い岩石が、古い古い大きな水の流れに、今もなお吹きすさぶ風に、幾億年もの間削り取られ
さながら幾本もそびえたつ塔のように、荒涼とした地に伸びている
黄色い崖たちが風を削り、風の悲鳴は一層明瞭に耳に届いた
鼻をかすめるかぐわしい花の香り
見えもしないはるか西の地では、吹き始める冷たい空気が
白い花を絨毯のようにその大地に広げるという
彼の声が空を裂いた
大きな黒い翼、鋭い瞳
巨大な鳥は高く鳴いて、空を旋回する
我々をせかしている
風が変わる前に
花が枯れる前に
発て
黄色い塔に止まっていた輩が一斉に飛び立つ
私は翼を広げて
一族の後に続いた
此処よりさらに東方へ
見知らぬ友に、季節の訪れを告げにいく
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