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10.

10.
「月影さん?」
あわててつかんだ服の裾の主が、さっと振り返った。
黒髪が揺れて、涼しげな眼がこちらを見下ろした。
「ナナ…?君か。やはりここにきているのだね。ラルフ・スタッカートは。」
鈴里の柵の外、ナナは張り巡らされた水路を辿って散歩をしていた。ラルフはまだ、里長代理と話しこんでいる。
そろそろ露玄の屋敷に帰ろうか、という時に、見覚えのある後姿を見つけ、あわてて手を伸ばしたのだ。
「ごめんなさい!一度、月影さんに謝ろうって思ってて…」
怪訝な顔をする月影に、ナナは自分が現れたばかりに、ラルフとの仕事をやりづらくしてしまった事を詫びた。
「ああ」
そんな事か、と、月影はふわりと笑った。
魔法省の女性陣を一瞬にして昏倒させるような、さりげない、綺麗な微笑み方だった。
「気にしなくていい。もとからあれとは気が合わないのだから。それよりも、君はずっとラルフにくっついていて、面倒事に巻き込まれたとは思わないのか?」
苦々しく、あれは動く騒動発生源だからな…と付け加える。対してナナはにこにこと楽しげに答えた。
「楽しいよ。ラルフは、いろいろ教えてくれるし、あ、銃の事とか、ゲームとか、町の事とか、仕事の事とかね。」
「…全く、何を教えているんだあいつは…」
ため息をつくと、月影はさらっとナナの髪をなでた。
「君も、早く安全なところにかくまってもらったほうがいい。この里は、噂通りのようだから。」
「え…?」
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