draft
草稿
[13] [12] [11] [10] [9] [8] [7] [6] [5] [4] [3]
7.
7.
月影がロストエクイテスと接触している頃、照瀬ではラルフとナナが、宿の一室で黒い影に囲まれていた。
「おいおいおい、街中だぜ?ここ。」
「な、なんなんですかこれ…!」
ランプの明かりにぼんやりと映る、黒装束の侵入者たちは音も立てずにゆらゆらと二人との距離を詰めていった。
ラ ルフの武器である拳銃は今も腰に携えているが、ナナを連れている事もあり、この人数を処理しきれない。彼は眉間にしわを作りながら、ナナをかばうように引 き寄せた。その時、影の一人がランプの火に接触したように見えたが、全く動じていない。ふわり、と独特なにおいがわずかに部屋に漂い、ラルフははっとし た。
「…これは。」
よりしろを使った使役の術、それに用いる香草のにおいを敏感にかぎ取った彼は、腰につるしたポーチから、
そっと一枚の紙を取り出す。ナナが不思議そうに彼の手元を見やった。その間にも、影たちはじりじりと近寄ってくる。手に見たことのない形のナイフを構えながら。
「久々過ぎて若干心配だが…いっちょやってみるか。」
ぼそりとつぶやくと、こちらを見ているナナに向かい片目をつぶって見せ、ラルフは札をさっと天井へ放り投げた。
「!?」
影たちが一斉に動きを止める。その隙にラルフは身に沁みついた口上を唱えた。
「上天の主星 眷属 黄塵の白蛇 血族の盟約に従え」
普段の声とは違うその独特な発声に、彼の懐にかくまわれたナナでさえびりびりと空気が震えるのを感じた。
声に応じるように、彼が放った紙はしゅるりと大きな白蛇に形を変え、次々に影たちを縛りあげる。影たちは蛇に睨まれたとたん声も上げずに囚われ、びくりと身を震わせた。とたん、次々に小さなネズミへと姿を変え、一目散に逃げていく。
「な、なに?ネズミ??」
ナナが首を傾げ、混乱した表情でラルフを見上げた。
「おー!パイちゃん来てくれたか!」
当人は嬉しそうに白蛇を撫でている。白蛇の方も、懐かしむように親しげな眼で彼を見ていた。
『はんす・すたっかーとのまご ひさしいな。 われのことなどわすれたかとおもうておったぞ』
鈴のように軽やかな声が白蛇から聞こえてくる。蛇をみて顔を真っ青にしているナナに、ラルフは慌てて紹介した。
「このでっかい蛇は、まあ俺の友達みたいなもんだ。安心してな?」
『…らるふ このむすめ…いや、それよりもいまは、われのうえでしっしんしているおとこをなんとかしておくれ』
え、とラルフが白蛇の体を目で追うと、確かに黒衣の男が一人、ネズミにならずにそのまま目を回していた。
おそらく、他のネズミたちを使役していた本体だろう。大方白蛇に驚いたのと、彼女の締め上げがきつかったあまり気を失ったといったところか。
「身なりからすると、暗殺者?でもなんで俺らに…」
『めざめがあさい。なにかあったら、またよべ。らるふ。つぎはいぜんのように、さけでもくみかわそうぞ』
しゅるり、と舌を動かし、真っ黒な瞳をラルフにむけると、何の前触れもなく白蛇は紙切れに戻っていった。
「パイちゃんまたな!」
その時、宿の部屋の扉が開いた。
「…おいおい、この国の人間はどいつもこいつも。他人の部屋に上がるときはノックってマナー、知らねえのか?」
黒衣の影たちと違い、全く殺気のないその人物への警戒を解き、ラルフは軽口をたたく。
「失礼いたした。超自然文明管理保安部の保安官どのとお見受けする。」
「いかにもそーだが、あんたは?」
長いローブをまとい、フードの奥には束ねた黒い髪がのぞいている。壮年の瞳はただ真摯に、ラルフという男を見定めているようだった。
「私は、鈴里という集落の長代理、露玄と申す。先ほどは私の里の者が失礼を。その男、里に連れ帰り厳罰に処しましょう。…そして、貴方にお頼みしたいことがあり、伺いました。」
ランプの明かりがちらちらと揺れて、狭い宿の部屋を照らしている。安宿の壁越しに先ほどの騒動の物音を聞きつけ、宿の主人がバタバタと階段を上がってくるのが聞こえた。
月影がロストエクイテスと接触している頃、照瀬ではラルフとナナが、宿の一室で黒い影に囲まれていた。
「おいおいおい、街中だぜ?ここ。」
「な、なんなんですかこれ…!」
ランプの明かりにぼんやりと映る、黒装束の侵入者たちは音も立てずにゆらゆらと二人との距離を詰めていった。
ラ ルフの武器である拳銃は今も腰に携えているが、ナナを連れている事もあり、この人数を処理しきれない。彼は眉間にしわを作りながら、ナナをかばうように引 き寄せた。その時、影の一人がランプの火に接触したように見えたが、全く動じていない。ふわり、と独特なにおいがわずかに部屋に漂い、ラルフははっとし た。
「…これは。」
よりしろを使った使役の術、それに用いる香草のにおいを敏感にかぎ取った彼は、腰につるしたポーチから、
そっと一枚の紙を取り出す。ナナが不思議そうに彼の手元を見やった。その間にも、影たちはじりじりと近寄ってくる。手に見たことのない形のナイフを構えながら。
「久々過ぎて若干心配だが…いっちょやってみるか。」
ぼそりとつぶやくと、こちらを見ているナナに向かい片目をつぶって見せ、ラルフは札をさっと天井へ放り投げた。
「!?」
影たちが一斉に動きを止める。その隙にラルフは身に沁みついた口上を唱えた。
「上天の主星 眷属 黄塵の白蛇 血族の盟約に従え」
普段の声とは違うその独特な発声に、彼の懐にかくまわれたナナでさえびりびりと空気が震えるのを感じた。
声に応じるように、彼が放った紙はしゅるりと大きな白蛇に形を変え、次々に影たちを縛りあげる。影たちは蛇に睨まれたとたん声も上げずに囚われ、びくりと身を震わせた。とたん、次々に小さなネズミへと姿を変え、一目散に逃げていく。
「な、なに?ネズミ??」
ナナが首を傾げ、混乱した表情でラルフを見上げた。
「おー!パイちゃん来てくれたか!」
当人は嬉しそうに白蛇を撫でている。白蛇の方も、懐かしむように親しげな眼で彼を見ていた。
『はんす・すたっかーとのまご ひさしいな。 われのことなどわすれたかとおもうておったぞ』
鈴のように軽やかな声が白蛇から聞こえてくる。蛇をみて顔を真っ青にしているナナに、ラルフは慌てて紹介した。
「このでっかい蛇は、まあ俺の友達みたいなもんだ。安心してな?」
『…らるふ このむすめ…いや、それよりもいまは、われのうえでしっしんしているおとこをなんとかしておくれ』
え、とラルフが白蛇の体を目で追うと、確かに黒衣の男が一人、ネズミにならずにそのまま目を回していた。
おそらく、他のネズミたちを使役していた本体だろう。大方白蛇に驚いたのと、彼女の締め上げがきつかったあまり気を失ったといったところか。
「身なりからすると、暗殺者?でもなんで俺らに…」
『めざめがあさい。なにかあったら、またよべ。らるふ。つぎはいぜんのように、さけでもくみかわそうぞ』
しゅるり、と舌を動かし、真っ黒な瞳をラルフにむけると、何の前触れもなく白蛇は紙切れに戻っていった。
「パイちゃんまたな!」
その時、宿の部屋の扉が開いた。
「…おいおい、この国の人間はどいつもこいつも。他人の部屋に上がるときはノックってマナー、知らねえのか?」
黒衣の影たちと違い、全く殺気のないその人物への警戒を解き、ラルフは軽口をたたく。
「失礼いたした。超自然文明管理保安部の保安官どのとお見受けする。」
「いかにもそーだが、あんたは?」
長いローブをまとい、フードの奥には束ねた黒い髪がのぞいている。壮年の瞳はただ真摯に、ラルフという男を見定めているようだった。
「私は、鈴里という集落の長代理、露玄と申す。先ほどは私の里の者が失礼を。その男、里に連れ帰り厳罰に処しましょう。…そして、貴方にお頼みしたいことがあり、伺いました。」
ランプの明かりがちらちらと揺れて、狭い宿の部屋を照らしている。安宿の壁越しに先ほどの騒動の物音を聞きつけ、宿の主人がバタバタと階段を上がってくるのが聞こえた。
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